歌手の
THE ラブ人間は、昨年末のライヴをもってベースのおかもとえみが卒業。このライヴは、新メンバーを迎えてはじめてのツアーとなる〈そしてまたオンボロのワゴンで〉の一環として行われた。前日にツアー初日の仙台公演を終え、東京では初の新メンバーお披露目となる。おそらく、この場にいるほとんどの人がまだ新しくなったTHE ラブ人間を知らない。そんな期待と不安が交錯するなか、ライヴはスタートした。
暗転して幕が開くと、まずは新メンバーが先にステージに登場。待ちわびた客席は早くも大きな歓声をあげる。続いて服部ケンジ(ドラムス)、谷崎航大(バイオリン)、ツネ・モリサワ(キーボード)の3人が登場し、一斉に楽器を鳴らすと、最後に金田が駆け込んでくる。金田がステージ前列の柵に足をかけて身を乗り出し、「新宿! 最高の夜にしようぜ!! ウィーアーTHE ラブ人間フロムトーキョー!! 」と高らかに宣言。場内が歓喜の声に包まれるなか、「これはもう青春じゃないか」がはじまった。金田は柵によじ登り、客の手をがっしりと掴みながら、目をかっ開いてまっすぐに前を見ながら歌っている。サビではみんな夢中で手をあげながら大合唱。それに応えるかのように、金田はすかさず客席にダイブ。2ヶ月ぶりの東京でのライヴ、その1曲目からとてつもない一体感。メンバーも客席も、誰もがキラキラとした目をしている。ステージは演奏できる喜びに、客席は再びラブ人間の演奏を体感できる喜びに満ちている。
その勢いのまま、金田が「東京まだまだやれんだろ? 」と凄まじい気迫で客席を挑発すると、2曲目「アンカーソング」がはじまる。客席は一斉にジャンプし、谷崎もステージ前方に出て激しい演奏を観せる。そして曲中、金田がうれしそうに新しいメンバーを紹介すると、ひときわ大きな歓声があがった。
「こんばんは、THE ラブ人間です。新宿LOFTきてくれてありがとう」と金田が挨拶。この日のイベントの主催、グッバイフジヤマへの感謝の言葉を挟み、「今回の俺たちのツアーは、この場でメンバーを紹介するというものです。5年間このバンドをやってきて、音楽は15年くらいやってきて、お客さんのありがたみも、ダメなやつながらわかってきたつもりです。直接会ってメンバーを紹介したいなと思って、こんなツアーを組みました」とこのツアーの趣旨を説明すると、改めて客席に新しいメンバーを紹介した。それを受けて、客席からは新メンバーの名前を呼ぶ声が聞こえる。続いて、お馴染みの3人のメンバーと、自分自身を紹介。最後に「ウィーアーTHE ラブ人間フロム東京、世田谷、下北沢」といういつもの言葉で締めくくると、場内は暖かい拍手に包まれた。
「ゆっくり夏をたどろう」という言葉から、初期の代表曲「大人と子供(初夏のテーマ)」を演奏。金田はかすれた声で繰り返し「行かないで 行かないで」と歌う。続いてメジャー・デビュー前にリリースされた初の全国流通シングルに収録されているバラード「東京」が演奏される。客席を見渡すと、目をつむりながら聴きいる女の子、叫ぶように一緒に歌う男の子、じっとステージを見つめる社会人と思しき男性。みんなそれぞれの思いを抱えながら、彼らの曲に心をあずけている。
金田が息を整えながら、再び話す。
「去年の12月23日に、俺らと5年くらい連れ添ったベースが辞めて、2ヶ月も経っちゃいましたが、新メンバーをそろえて戻ってきました。それでも俺たちはやれてるのよ。辞められないんだよね、音楽。見てくれてどうもありがとう。うれしいです」
「なにがあっても辞められなくて、こうやっていまだに石にかじりついたように歌を歌っています。ずっとずっと歌っていくって決めたから、どんなことがあっても歌っていくって決めたから、もっともっと大好きになった歌を最後にみんなで歌って帰りたいと思うんですけど、どうですか? 歌ってもらってもいいですか? 」
泣きながら歓声をあげるもの、せいいっぱい拍手するもの、客席はそれぞれのやり方で金田の言葉に応える。金田は最後に「その歌でこんなことが歌われているんだ。いつもごめんね、いつもありがとう」と話すと「新宿LOFT、本当にありがとな!! 」と叫び、最後の曲「砂男」がはじまった。金田の力強くて、たまらなく優しい声が響く。ツネと谷崎は笑顔で顔を見合わせながら演奏。曲中に金田が歌詞を変えながら叫ぶ。「このメンバーに出会えたから、ありがとう、前のベースおかもとえみに! 」。実はこの日、おかもとはライヴを観にきていた。それを金田が知っていたのかはわからないが、この言葉は彼女に届いたことだろう。「歌ってくれ」という金田の言葉を合図に、客席は大声で歌う。この瞬間、この場にいた人の心は確実にひとつになっていた。いや、ひとりひとりが抱えていた思いは違うものかもしれないが、この場にいた誰もがTHE ラブ人間というバンドを、心から愛していることは確かだ。「俺たちをとおりすぎていった人たち、あなたたちにはもう会えなくていいけど、こんなに仲間がついてんだ」と金田が叫ぶ。最後にもう一度メンバーを紹介し、「ありがとう」と感謝を告げる。ほかのメンバーも笑顔で「ありがとう」と口にしながらステージを去り、ライヴは終了した。
約2ヶ月ぶり、そして新メンバーを迎えて初となる東京でのライヴ。ステージも客席もよろこびに満ちていた。個人的には、筆者がラブ人間のライヴをはじめて観た、2011年のステージを思い出した。メンバー卒業というバンドの危機を乗り越え、再び走り出したラブ人間は初期衝動にあふれていた。客席の反応を見ても、誰ひとり後ろを向いているものはいないと感じる。ここからまた、勢いを増して、素晴らしい音楽を届けてくれると確信できるステージだった。いままで彼らのライヴを観続けてきた人はもちろん、彼らのステージを一度でも観たことがある人も、まだ一度も体感したことがない人も、これからのTHE ラブ人間に注目してほしい。ツアーはまだ、はじまったばかりだ。(前田将博)
写真 : Daisuke Miyashita
2014年3月2日(日)THE ラブ人間@新宿LOFT
〈そしてまたオンボロのワゴンで〉
(〈グッバイフジヤマ1stミニアルバム「5人はアイドル」リリースツアーfinal stage〉)
<セットリスト>
1.これはもう青春じゃないか
2.アンカーソング
3.大人と子供(初夏のテーマ)
4.東京
5.砂男
・THE ラブ人間 ツアー2014〈そしてまたオンボロのワゴンで〉
3月18日(火)福岡BEAT STATION
3月20日(木)小倉FUSE
3月21日(金)高松
3月29日(土)なんばHatch
4月13日(日)名古屋TOKUZO
4月19日(土)広島・横川シネマ
4月27日(日)札幌CLUB DUCE
5月3日(土)富山
・THE ラブ人間 オフィシャル・サイト
http://loveningen.jp